空き家を放置した場合の法的措置は?

空き家に関連する法律

平成27年に施行されました「空家等対策の推進に関する特別措置法」があります。この法律の主な部分を解説します。

  • 定義(第2条)【空家】
    空家等とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。※別荘などの2次的使用の建物は、この法律では空家とは言いません。

 

  • 定義(第2条)【特定空家】
    特定空家とは、そのまま放置すれば倒壊等の著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理がおこなわれていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。※空き家の問題点で挙げた項目はこの条文に書かれています。

 

  • 空家等所有者の責務(第3条)
    空家等の所有者又は管理者は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。※この条文で、所有者や管理者が適正な管理をしなければならない責務があると定めています。

 

  • 市町村に立ち入り調査権を与える(第9条)
    空家調査のために空家等と認められる場所に立ち入り調査する権限が与えられました。この調査を所有者が拒むと20万円以下の過料に処せられます。

 

  • 特定空家に対する是正措置:条文では判りにくいので順を追って説明します。①特定空家と認められれば、市町村から「助言又は指導」がされます。②「助言又は指導」から、猶予期間を経て改善されない場合は、市町村から「勧告」されます。

 

※「勧告」を受けますと、固定資産税。都市計画税などの住宅用地特例(税額が約1/6になる特例です)の対象外となり、固定資産税等の金額が約6倍となります。③「勧告」から、猶予期間を経て改善されない場合は、市町村から「命令」されます。命令を受けると意見書などで従わない理由を申し立てることができます。

※命令に従わない場合は、50万円以下の過料に処せられます。④「命令」から、意見書などがなく、必要な措置を命じた場合で、期限までに履行されない場合は、「行政代執行法」に基づいて、市町村が義務者に代わって執行することができます。

※この場合の費用は、所有者に請求されます。

 

特定空家とは?判断の参考規準

  1. そのまま放置すれば倒壊等の著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. そのまあ放置すれば著しく
  3. 適切な管理がおこなわれていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態と第2条に定義されていますが、ガイドラインに特定空家の参考規準が示されています。

 

  • 倒壊など危険となるおそれのある状態
    「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」として、部材の破損や基礎の不動沈下などによる建築物の著しい傾斜、基礎と土台の破損・変形・腐朽など建築物の構造耐力上主要な部分の損傷、屋根や外壁などの脱落・飛散のおそれ、擁壁の老朽化などが例示されています。

 

  • 衛生上有害となるおそれのある状態
    「そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態」として、建築物が破損し石綿が飛散する可能性、浄化槽の破損による臭気の発生、ごみの放置・不法投棄による臭気の発生やネズミ、ハエ、蚊の発生などが例示されています。

 

  • 著しく景観を損なっている状態
    「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」として、景観法にもとづき策定した景観計画や都市計画に著しく適合しない状態になっている、屋根や外壁が外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている、多数の窓ガラスが割れたまま放置されている状態などが例示されています。

 

  • 生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
    「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」として、立木の腐朽・倒壊・枝折れ、立木の枝が近隣の道路にはみ出し通行を妨げている、動物が棲みつくことによる周辺への影響、不特定の者が容易に侵入できる状態などが例示されています。

 

周辺へ悪影響を及ぼす程度

ガイドラインによりますと

「特定空家等」が現にもたらしている、又はそのまま放置した場合に予見される悪影響が周辺の建築物や通行人等にも及ぶと判断された場合に、その悪影響の程度が社 会通念上許容される範囲を超えるか否か、またもたらされる危険等について切迫性が 高いか否か等により判断する。

その際の判断基準は一律とする必要はなく、気候条件 5 等地域の実情に応じて、悪影響の程度や危険等の切迫性を適宜判断することとなる。

例えば、樹木が繁茂し景観を阻害している空家等が、景観保全に係るルールが定めら れている地区内に位置する場合や、老朽化した空家等が、大雪や台風等の影響を受け やすい地域に位置する場合等は、「特定空家等」として措置を講ずる必要性が高くなる ことが考えられる。

つまり、空家そのものの状態に加えて、周辺の建築物や通行人等に影響が及ぶかどうかも特定空家として指定する上での判断基準となるということです。